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永安湿地の前身である烏樹林塩田は、1908年に開拓され、かつて台湾南部における重要な製塩拠点でした。台湾の塩業の栄枯盛衰の歴史を映し出しています。日本統治時代、この塩田は大いに発展し、1952年に国民政府が接収した後、「台湾製塩総廠」として再編され、製塩産業の発展が続けられました。しかし、1970年代の産業転換に伴い、塩業は次第に衰退しました。1985年には台湾電力がこの地を買収し、興達発電所の拡張用地とし計画が進められ、かつての繁栄を誇った塩田は正式にその歴史の幕を閉じました。

烏樹林製塩株式会社
永安湿地内に位置する「烏樹林製塩株式会社（場務所：管理事務所）」は、この地で最も歴史的価値の高い建築物です。管理事務所は、ヨーロッパの伝統的なオランダ式バロック建築を採用し、一部に日本の和風様式を取り入れています。塩田跡地の中央にそびえ立ち、その姿はひときわ目を引きます。しかし、塩田の廃止後、長年にわたり管理が行き届かず、高塩分環境による侵食も重なり、建物の損傷は次第に深刻化し、一時は危険建築物と見なされるまでになりました。地域の文化意識の高まりに伴い、興達発電所はこの歴史遺跡に関心を寄せるようになり、2006年に修復資金を投じました。この百年の歴史を持つ建築は、かつての姿を取り戻し、台湾の塩業の栄枯盛衰を物語る重要な歴史遺跡となりました。

烏樹林製塩株式会社は、日本統治時代から現代に至るまでの歴史を刻んできました。その外観は美しく、洗い出し仕上げの施工が精緻です。管理事務所はすでに無人となっていますが、広大な瓦盤塩田の中に静かに佇み、今なお歴史の趣を感じさせます。まるでかつての塩業の繁栄を物語るかのような、歴史的・文化的価値の高い産業建築です。

永安マングローブ自然公園：生態と人権が共存する道
永安湿地はかつて塩田地域でしたが、その後、台湾電力がこの地に興達火力発電所を設置したことで、石炭灰の汚染が深刻化し、塩の天日干しができなくなりました。1986年、台湾電力はこの地を石炭貯蔵場にする計画を立てましたが、地元住民や環境保護活動家の反対を受け、最終的に政府の支持を得て、1996年に「永安マングローブ自然公園」として設立されました。現在、ここは台湾の産業転換を映し出す場所であるだけでなく、高雄沿岸において最も豊かなマングローブ生態系を有する地域となっています。多種多様な鳥類や水生動植物が生息し、自然観察や環境教育を推進する上で重要な場所であるとともに、人と自然が共存する持続可能な価値を示しています。

マングローブと鳥類が共存する生態の宝庫
永安湿地は豊かなマングローブ生態系を有しており、防風・防砂、堤防の保護、水質の浄化といった役割を果たすとともに、多くの生物にとって重要な生息地となっています。台湾のマングローブは主にシクンシ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、アカバナヒルギからなり、南部ではオヒルギとヤエヤマヒルギが多く見られ、生態系の多様な緑の防壁を形成しています。

毎年10月から翌年4月にかけて、クロツラヘラサギなどの希少な渡り鳥が北方から飛来し、1月から3月にかけてその数はピークに達します。この湿地は、彼らにとって越冬と採餌の重要な生息地となっています。また、永安塩田は台湾南部最大の塩田湿地として、110種類以上の鳥類を引き寄せています。その中には、一級保育類であるクロツラヘラサギ、オリエンタルコウノトリ、ハヤブサ、および二級保育類のクロコウノトリ、ミサゴ、コアジサシなどが含まれます。毎年春と秋の渡りの季節になると、多くのシギ・チドリ科の水鳥がこの地に飛来し、壮観なバードウォッチングの光景が広がります。そのため、多くの自然愛好家がこの地を訪れます。

豊かな生態資源を有する永安湿地は、1999年に国際鳥類連盟（IBA）によって重要野鳥生息地に指定され、2018年には内政部によって地方級重要湿地に認定されました。ここには青々と生い茂るマングローブ林が広がり、渡り鳥が自由に舞う楽園となっています。湿地の生態系が持つ豊かな生命力を象徴する場所です。